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なぜ東京国際映画祭は世界で無名なのか

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久々にネット上で「なるほど」と思える記事を読んだ。
<なぜ東京国際映画祭は世界で無名なのか>というプレジデントの記事がそれで、
私が東京国際映画祭について以前から釈然としないでいたかなりの事に、色々と裏付けがされる記事で、
納得すると同時に怒りも込み上げてきた。

東京国際映画祭が、東京都なり国なりから支援を受けて運営されていることは、
これまでも漠然とは分かっていたけれど、
改めて「予算の半分以上が税金で賄われる公益性の高いイベント」と読み、ちょっとビックリ。

以前から東京国際映画祭に通っている人なら知っている事だけれど、
この映画祭は、昨2014年に様々な方向転換が行われた。
そこには、政府が進める“クールジャパン”の恩恵もあり、
一昨年まで約6億円だった事業費も約倍額の10億9656万円に大幅拡大したという。

大金が注ぎ込まれ、より良いものに変わりつつある兆候が見えるなら、まだ納得できるけれど、
昨年の東京国際映画祭でそう感じた人が、果たしてどれ程度居るものか。
大手配給会社が配給する作品の“有料試写会”状態は相変わらずだし、
開幕のレッドカーペットを闊歩するのは、ほとんどが国内の俳優と、
そうでなければ、ウルトラマンやドラえもんといった着ぐるみばかり。
あの着ぐるみ軍団に、政府が推し進めるお見当違いな“クールジャパン”を見せ付けられた気がした。

何の改善も感じられないのに、約11億円ものお金が、どこに消えたのかと不思議に思ったら、
その内の66.6%もを占める7億3052万円は“委託費”として、
非常に偏った委託先に支払われているという。
そこでは健全な競争は排除され、一定のグループが公益事業の運営、事業費を独占。
(記事には組織名も明記。)

東京国際映画祭と限らず、例えば、今年カンヌ国際映画祭で日本が5年ぶりに出したジャパンパビリオン等も
経産省と総務省による共同基金“ジャパン・コンテンツ ローカライズ&プロモーション支援助成金”、
通称“J-LOP”からの助成を受けているが、
問題は、そのような助成金の支援は現場には届かず、
映画会社や広告代理店といった“映画村”の中だけで多くの事が計画、実施されているという現状。
J-LOPの基金管理は、映像産業振興機構に委託され、
そこには、東京国際映画祭の運営も任されているクオラスの社員が出向。
また、同映画祭を主催する公益財団法人ユニジャパン理事13人中7人は、映像産業振興機構の理事も兼任。
さらに、J-LOPの予算の提言を行っている経団連のコンテンツ部会や政府の知的財産戦略本部など
多数の公職にもこれらの理事が名を連ねているという。


あまりにもベタベタな癒着に、もう何がナンだが分らなくなってしまうが、要は…
日本では国際的な実務能力を持たない“映画村”の人間たちが、
政府から税金を引き出し、利権を貪っているという前時代的な利権構造が定着し、
日本の映画産業の国際的な発展の障壁になっている。

…という話。
この記事は、「“国際映画祭”というひとつの実例をとってみても、
産業に責任をもたない人間たちによって、無責任な未来がデザインされている。
日本映画を次世代につなぐには、この利権構造との決別が急務である。」と締めている。御尤もでございます。



ちょっと話はズレるけれど、東京国際映画祭のみならず、毎年日テレで放送されている
(“アカデミー”とは名ばかりで、まったくアカデミックじゃない)日本アカデミー賞などからも、
日本の映画界を蝕むベタベタな癒着はずっと前からムンムンと漂っていた。
確か昨年、ビートたけしが、「日本アカデミー賞は、松竹、東宝、東映、たまに日活の持ち回り。
それ以外が獲ったことはほとんど無い。(賞を選定する)アカデミー会員なんてどこにいるんだ。
汚いことばかりやっている。」と発言した時は、私、ぜんぜんビートたけしのファンではないけれど、
「よくぞ言った」と溜飲が下がる思いであった。
その後、日本アカデミー賞協会会長の東映・岡田裕介会長が発した反論も、勿論知っているけれど、
まったく説得力が感じられなかった。

ビートたけしがああ発言した後の今年の日本アカデミー賞にしたって、
『永遠の0』が圧巻の8冠獲得!と称賛され、何も変わらない体質に絶句、
…と言うか「やっぱりね」とやけに納得。
受賞の席で「こういう賞は普通文芸作品などしか評価されないものですが、
日本アカデミー賞はちゃんと娯楽作品にも光を当ててくれる」と感激した様子の山崎貴監督のスピーチを聞き、
いや、監督、“ほぼ娯楽作品にしか光を当てない”のが日本アカデミー賞でしょ、と訂正したくなった。
多くのシネフィルは、“興行成績に関係無く、質で賞を選定するのが映画賞”と
頭の片隅で勝手に思い込んでいるから、日本アカデミー賞の結果を見ると、唖然とするのだ。
(唖然とする以前に、そういう人たちは最初から日本アカデミー賞の結果など気にも留めないと思うが。)
もちろん、『永遠の0』のような娯楽作品に、多くの日本人が感動させられているのは紛れもない事実。
だから、日本アカデミー賞は、最初から「正しく選定しています」などと苦し紛れの言い訳をせず、
動員数や収益などハッキリと数字に表れた興行成績順で賞を決めます!と宣言すれば良いのだ。
映画界を経済的に潤すことだって、映画界への立派な貢献と言えるであろう。
まぁ文化的には衰退し、日本映画の世界的地位は益々失墜の一途を辿ると思うけれどね…。

『海角七号』が一定の興行成績を収めたことで、国内需要にシフトを切り替えてから、
国際競争力を失った台湾映画界が良い例。
しかし、この記事によると、その台湾でさえ、政府の支援で、昨年、
遠藤周作原作でマーティン・スコセッシ監督がメガホンをとる日本が舞台の日本語時代劇、
『沈黙』の撮影誘致に成功。
また、台湾映画界は、今や映画市場が世界第2位にまで成長した中国ともがっちりタッグを組んでいる。
韓国も大陸との合作が進んでいるし、後発の釜山映画祭が、東京国際映画祭をしのぐ盛況ぶり。
もはや日本は、“全世界”どころか“アジア”の中でも孤立状態の劣等生…。



私は、何でもカンでもグローバル化することには、むしろ反対だけれど、
それにしても、日本の大きな組織の上層部や政治家を見ていると、
島国根性が骨の髄にまで染み付き、あまりにも国際感覚に欠け、
(映画と限らず様々な分野で)これでは国際競争力が無くて当然と、呆れてしまうことが多い。
日本の10年後、いや、3年後を考えても、気分真っ暗ヨ…。


国民の税金をガッポリせしめながら、今年チケット代をまた値上げした東京国際映画祭に、
何か良い変化が起きているとは考えにくいけれど、
こういう記事が出ると、ファンの目もどんどん厳しくなるだろうから、今後の動向に注目。
今年は最低限「ニッポンは、世界中から尊敬されている映画監督の出身国だった。お忘れなく。」、
「TOKYOが、カンヌ、ベネチア、ベルリン、を超える日が、やってくる!?」などという
ドン引きの愛国キャッチコピーを英訳と共にポスターに刷るなどという無粋は控えていると信じております。
(そのポスターが、東京五輪のロゴ問題で一躍時の人となった佐野研二郎デザインであることにも、
公共事業の根深い癒着を感じた私。)
“国際”と名乗るのが小っ恥ずかしいくらいドメスティックな映画祭、
東京“国内”映画祭、…もとい、東京国際映画祭の改善に期待。
…さもないと、その内「税金泥棒!」の声が上がります。


プレジデントの<なぜ東京国際映画祭は世界で無名なのか>を全文読みたい人は、こちらへ。

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