本日、2015年11月26日(木曜)、第16回東京フィルメックス、コンペティション部門で上映の台湾映画、

今回のフィルメックスで一番観たかった作品。
理由は、単純に、張作驥(チャン・ツォーチ)監督作品が好きなのと、
好きだけれど、なかなか日本では一般劇場公開されず、こういう機会でないと観賞しにくいから。
また、本作品は、このフィルメックスの直前に開催された
第52回金馬獎でも、多くの部門にノミネートされ、

結果、最優秀助演女優賞、最優秀新人俳優賞、最優秀オリジナル・サウンドトラック賞、最優秀編集賞の
5部門で受賞に輝いた話題作(→参照)。 期待が高まります。
ただ、フィルメックスのチケット発売前から、この作品の上映にはQ&Aが付くと発表されていた事に、
疑問に感じていた。だって、張作驥監督は、女性脚本家から強姦を訴えられ、
裁判で争うも負け、今春から刑務所で服役中。(→参照)
いくら台湾がユルくても、「東京の映画祭でQ&Aに参加してきます」で仮出所なんて有り得ないでしょ。
一体、誰が来るんだ…?!と不思議に思っていたら、フィルメックス開催のちょっと前に、
出演者の李鴻其(リー・ホンチー)、王靖婷(ワン・チンティン)、
そしてプロデューサー高文宏(カオ・ウェンホン)の来日が発表された。
そういえば、2013年に同じくフィルメックスで前作『夏休みの宿題~暑假作業』が上映された際も、
あの時も、なぜ監督不在で子供が一人で?と疑問に思ったら、その後、事件の事を知り、察しがついた。
今回も張作驥監督が来ないのは残念ではあるけれど、そういう状況下でよく新作を撮れたなと感心もしている。
それに、今回来日する李鴻其は、日本での知名度はまだまだでも…
金馬獎で新人賞を受賞した注目株。受賞直後に日本でお話を聞けるのは、楽しみでもある。
★ 『酔生夢死~醉‧生夢死』上映前
会場はいつもの有楽町朝日ホール。
本当はQ&Aは前方が好ましいけれど、
本気で観たい作品だったので、映画観賞のし易さを重視して、やや後方の席をとってしまった。
比較的近い席には、今回審査員を務めている張艾嘉(シルヴィア・チャン)が座っている。
還暦を過ぎているとは信じ難い若々しさ。
“頑張って若作りしている”という痛々しさが微塵も無く、自然にお美しい。
ずっと若い私の方が、なんでクタビレているんだ?!と反省も。
上映開始数分前には、Q&Aに登壇する3人も会場に入り、左寄りの席に着席し、我々と共に作品観賞。
★ 『酔生夢死~醉‧生夢死』キャスト&プロデューサーQ&A
映画の上映が終了すると、フィルメックスのプログラムディレクター市山尚三を司会進行役に、いよいよQ&A。
市山氏が、「では、お呼びしましょう」とまだ言っている最中に、
主演男優の李鴻其がふらふらステージに入ってきた。![]()

今回は、なんでだかよく分からないけれど、全員立ちっ放しでQ&Aが実施された。
お蔭で、後方の席からも、お顔は見え易いが、距離があるため、
写真はあまりきれいに撮れていない。

以下、気になったお話だけいくつか抜粋。

どこか面白いと感じて、これを映画にしたのですか?

李白の詩<將進酒>と南管の音楽にインスピレーションを得て、映画にすることにしました。

出演の経緯や、張作驥監督の演出について。

私は元々張作驥監督のスタッフとして演出部で働いていました。
ミーティングの時、監督から出てみないかと言われ、どうせ少ないシーンだと思ってやることにしました。

張作驥監督からは自由にやらせてもらえました。
演じる僕自身が感じる気持ちに合せ、そのままを表現させてもらえた。

時系列が行ったり来たりしますが…。

人生はそのようなものかと思います。
イヤな事があっても良い事があっても、それが何月何日の事だとか覚えていないものです。
自分自身が感じる気持ち、情緒が時間軸なのかも知れません。

撮影中は、なんだかよく分かっていませんでした。
出来上がった作品を最初に観た時は、監督がこのように編集していたのかと驚きました。

出来上がった作品を何度か観てみますが、十回観ても十回分りません。
映画が詩のようです。観る人によって解釈が違い、その解釈の幅が広い。でも、何かが残ります。

張作驥監督には、好きなように編集してもらいました。
たとえ、海外の映画祭などに出した時、分らないと言われるような物になっても、です。

中国の原題『醉‧生夢死』だと、“醉”と“生”の間が空いていて、“・(点)”が入りますが、何か意味が?

想いを込めて、この“・(点)”を入れています。
“醉”に象徴されるのはアル中の母親、“生夢死”は他の男性たちを意味しているので、
タイトルでそれらの間を空けるのが理想的です。

僕個人の考えですが、“醉”は生きたまま死んでいるような、死んでいるようで生きている母、
“生”は“生存”の“生”で、ホストの仕事をしている仁碩、
“夢”は良い学校を出て、期待の大きかった兄・上禾、そして“死”は僕が演じた老鼠ではないかと。
でも、死は、そこからの始まりを意味しているかも知れません。
中文原題にある“・(点)”には想いが込められているそうなので、
日本で公開する際には、邦題に“・(点)”を入れてあげてネ!…と言いたいところだけれど、
日本ではなかなか一般公開に漕ぎ着けにくい作品だと思う。
なにせ張作驥監督作品が日本で公開されたのは、『きらめきの季節 美麗時光』(2002年)が最後ですから…。
主演男優の李鴻其は、映画の中だと、ひねっこびたチンピラだが、
実物は爽やかな好青年で、えらくギャップがあり、自分の言葉できちんと話せる頭の良い人。
見た目の印象よりずっと大人っぽい声も印象に残る。渋い低音で素敵なのです。
主人公の従姉・大雄を演じた王靖婷は、元々裏方さんとは意外。
台湾の裏方さんって、容姿のレベルが高いのですね。裏か表か、今後はどちらの道へ進むのだろう。
★ 李鴻其&王靖婷サイン会
約30分のQ&Aが終了した後は、ホールに出てきた李鴻其と王靖婷が、希望者に
サイン会を実施。

私は、李鴻其にだけサインをいただいた。一人一人にとても丁寧にサインしてくれておりました。
映画『酔生夢死~醉‧生夢死 Thanatos, Drunk 』については、また後日。
私個人的にはとても気に入ったが、好き嫌いが分かれる作品だと思う、…とだけ今は記しておく。