昨日、2015年11月27日(金曜)の晩、
第16回東京フィルメックスで、特別招待作品として上映の
張艾嘉(シルヴィア・チャン)監督最新作、

『念念~念念 Murmur of the Hearts』を観賞。
張艾嘉は、今年のフィルメックスで審査員を務めており、東京に滞在中。
前日観た『酔生夢死』の上映会場でも御見掛けしたが、
自身の監督作品『念念』ならなおの事、上映終了後にQ&Aを実施。
私が東京の映画祭のステージで張艾嘉を見るのは、
恐らく2010年、東京国際映画祭で上映された『ブッダ・マウンテン 希望と祈りの旅』以来。(→参照)
さらに遡ると、2004年、同じく東京国際映画祭で畢國智(ケネス・ビィ)監督作品
『ライス・ラプソディ~海南雞飯』が上映された際にも、主演女優として登壇した張艾嘉のお話を聞いた。
つまり、オリンピックの開催頻度より少なない5~6年に一度ということか。
★ 『念念~Murmur of the Hearts』張艾嘉監督Q&A
この日は、上下鮮やかなブルーの服で登場した張艾嘉。
もしかして、映画の中の空や海をイメージして、意識的にブルーを選んだのだろうか。
東京フィルメックスのディレクター
林加奈子の司会進行でQ&Aスタート。

以下、記憶に残ったお言葉を抜粋。

この作品は日本人の蔭山征彦さんが脚本を手掛けていますが、
どのような経緯で撮るこのになったのですか?

これを撮るのは私の定めだと思いました。
この脚本が私の机の上に置かれていたのは運命です。
蔭山さんが、自分の生い立ちから書いた物で、主人公の男性の親への想いや父母とのわだかまりを読み、
私も一人の母親として心を打たれました。

見間違いでなかれば、エンディングに、絵を描いた人の名前が
李心潔(アンジェリカ・リー)とクレジットされていたようですが?

そうです、作中使われている絵は全て李心潔が描いた絵です。
最初の段階では、地元の画家に頼むつもりでいましたが、
その男性画家の絵は、女性の内面を描けていませんでした。
次に女性画家を考えましたが、今度は母性が表現し切れていなかった。
そこで、結局李心潔にお願いすることになりました。画家でもある彼女は素晴らしい絵を描いてくれました。

主演女優・梁洛施(イザベラ・リョン)のキャスティングは、どのように決めたのですか?

主演女優を誰にするかは、かなり長いこと悩んでいました。
ちょうどその頃、梁洛施がカナダから帰ってきて、
ずっと脚本も読んでいないけれど、また演じてみたいという彼女の話を聞いていて、
「ヒロインはここに居た!」と思いました。
梁洛施のちょっと神経質な感じとか、作品の主人公に合っていると、感じました。

膨大に撮って、編集でかなりカットしたのではないかという印象を受けましたが…。

商業的な作品ではないので、ストーリーテリングには重きを置くていません。
脚本は一旦置いて、一人一人の役者の情感を大切に撮っていきました。
普段私は、再度撮影する際は現地に行かないことが多いのですが、
この作品では、風景の撮影をするためだけにも緑島に幾度となく行きました。
何度も行くと言えば、作中、日本人が経営するバーが登場しますが、
そこにも4度も撮影に行って、仕舞いには「またか」という顔をされてしまいました。

作中登場する緑島は、<緑島セレナーデ~島小夜曲>という曲でも歌われていますが。

<島小夜曲>に歌われている緑島は、緑島だけではなく台湾全体を指しているので
この映画には使わず、<台北の空~台北的天空>という曲を採用し、
主人公の母親の都会へ行きたいという気持ちを重ねました。
そもそも緑島は、当初脚本にはありませんでした。
元々の脚本では、台湾と北海道が舞台だったのです。
しかし、台湾と北海道では距離もかなりありますし、撮影が困難になるので、緑島を選びました。
緑島は、かつて“火燒島”と呼ばれ、監獄があった忘れかけられた離島でしたが、
近年観光地になりつつあり、ダイビングに行く人なども増えています。

衣装へのコダワリは?

梁洛施は何を着ても似合って、綺麗なので、衣装は何でも良かった。
実は、私自身が一番気に入っているのは、
ピンクのTシャツを着た張孝全(ジョセフ・チャン改めチャン・シャオチュアン)です。

“藤”という看板を掲げたバーについて。

あそこは、もう三十数年も日本人が経営しているバーです。
会員制のバーなのですが、私は一度も連れて行ってもらったことがありません。
30年以上内装も変えず昔のままで、重ねた時間を醸す不思議な雰囲気です。
お客さんは少なくなっていたようですが、この映画が公開され、訪れる人が増えています。
張艾嘉監督自身は、この映画を商業作品ではないと位置付けているのか。
私は、この前に観たのが『酔生夢死~醉‧生夢死』だったせいか、『念念』がえらく商業的に感じてしまった。
それはそうと、作中使われている
<台北的天空>は、王芷蕾(ジャネット・ワン)が歌っている(↓)コレ?

作中、重要な舞台として緑島が出てきても、
「<緑島セレナーデ>は使っていない」と張艾嘉監督が明言しているように、
別に作品に政治的意味を含ませたかったわけではなく、
親への想いや自分の中の葛藤といった個人の感情を描きたかったのでしょう。
日本人経営の怪しいバー藤は、今後、台湾映画好きな日本人でも行く人が増えるかも知れませんね~。
(客離れが進んでいたのなら、ちゃんと会員制を守っているかも疑問だし。)

映画『念念~念念 Murmur of the Hearts』の詳細は、また後日。
(ブログに挙げていない映画の感想が溜まりまくっていて、ちょっとゲンナリしている…。)