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始皇帝と大兵馬俑展

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2015年10月末、東京国立博物館・平成館で始まった特別展<始皇帝と大兵馬俑展>へ。
色々訳有って、11月の第2週目に一度、
その約一週間後、同じ敷地内の表慶館で開催の<アート・オブ・ブルガリ>展のついでにもう一度と、
結局2度見学。


感想がすっかり遅くなってしまったけれど、本日2015年12月11日(金曜)、BS日テレで放送の
『ぶらぶら美術・博物館』がこの展覧会を取り上げるので、それに合わせて、ブログを更新。

★ 秦の始皇帝陵の兵馬俑

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“兵馬俑”とは、古代中国で、死者を埋葬する際、副葬品として使われた兵士や馬をかたどった土像のことで、
日本で“兵馬俑”と言ったら、一般的には、中国統一を成し遂げたファーストエンペラー、
秦代(紀元前221年-紀元前207年)の始皇帝・嬴政(紀元前259年-紀元前210年)を埋葬する陵墓、
現在の陝西省西安市臨潼区にある秦始皇陵近辺から出土された物を指す。

その発見は意外にも最近で、1974年3月29日のこと。
この地域に暮らす村人・楊志發が井戸を掘っていた時に偶然発見。
その後、発掘作業、修復、保護、研究が進み、
1979年10月1日、秦始皇兵馬俑博物館として、まず一號坑、
1991年に三號坑、1994年に二號坑と次々と一般公開。
そして1987年、秦始皇帝陵及び兵馬俑坑は、ユネスコの世界文化遺産に登録されている。


私は、古過ぎる物にロマンが見い出せず、考古学にはまったく興味が無くて、
ポンペイやギリシャでもビビビッと来なかったのだが、
自分の中に流れるアジア人の血ゆえか、兵馬俑だけには、以前から並々ならぬ興味を抱いていた。
そんなある日、仕事で、東京下町のとある中小企業を訪ねたら、
建物エントランス両脇にそれぞれ一体ずつ置かれた兵士と馬の俑が、私をお出迎え。
なんでも、その会社の社長が中国へ行った際に買ったレプリカらしいが、あまりに立派で目が釘付け。
たかがレプリカ2体でこんなに迫力があるのだから、
現地でホンモノを大量に見たら、度肝を抜かれること間違い無し!と兵馬俑への憧れは益々高まった。

ただ、現地に兵馬俑を複数回見に行っているうちの父や日本在住華人が、
「昔は結構アバウトで、下に下りて、兵馬俑の間を縫うように歩くこともできたけれど、
どんどん整備され、厳格になり、間近で見られなくなっている」と言ったのが、気になっている。
あぁー、こんな事なら、もっと早い内に西安まで行っておけば良かったぁ~、と後悔は募るばかり。

悶々としている間にもサッサと行けば良いのだが、
中国旅行というと、どうしても北京へ行きたくなってしまうので、西安はどんどん後回し。
いつ行くのでしょう、私。
私にとっては「ナポリを見てから死ね」ではなく、「西安で兵馬俑を見てから死ね」なのです。
(ナポリはナポリ人が言うほど素敵な街だとは思えず、むしろ物騒な印象が強くて、
“ナポリを見てから死ね”というより“ナポリへ行ったら死ぬ”という危機感さえ湧いた。)

★ 始皇帝と大兵馬俑展

なかなか西安へは行けないので、上野でお手軽兵馬俑見学。
“上野で兵馬俑”といえば、2004年に、<大兵馬俑展~今、蘇る始皇帝の兵士たち>が
発掘30周年記念事業として、上野の森美術館で開催。
その時は、文官俑や百戯俑などが、日本初公開された。

ほんの数年前の展覧会だと思っていたが、あれからもう十年以上経っていたのか。
今回の<始皇帝と大兵馬俑展>は、同じ上野でも国立東京博物館で開催なので、
規模が大きくなっているのではないかという期待が湧く。




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杏がナビゲーターを務めるNHKの番組で、兵馬俑を取り上げる『アジア巨大遺跡』が
放送される前に行った方が空いているかなぁ~とも考えたが、
都合がつかず、結局、一度目の見学は、11月の第2週目、平日の朝一狙いで東博へ。

私は、開館3分前の9時27分に到着。
入り口にはちょっとした列がすでにできていたが、ゲンナリするほどの長蛇の列ではない。
9時半ピッタリに開門すると、列の順番を乱さぬよう、そのまま皆で前進。
<アート・オブ・ブルガリ>というジュエラーBVLGARIの展示を観る人は、
途中、表慶館で列を抜けていくのだが、その人数は極めて少ない。
つまり、9時半の時点で開門を待っていた人の大半が、<兵馬俑>展目当てであった。
それでも、平成館入り口では待たされることなく、第一陣で入館。
(私より10人くらい後ろの人たちは第2陣で、平成館への入館に若干の待機が必要であった。)

チケットを切り、2階へ上がると、音声ガイドの貸し出しコーナーあり。
この展示でナビゲーターを務めているのは壇蜜。
NHKの中国語講座『テレビで中国語』に出演していることで、白羽の矢が立ったのだろうか。
使用料は520円也。今回私は音声ガイドを借りずに見学することにした。


展示会場は、建物左手の第1会場と右手の第2会場。
<兵馬俑展>といっても、展示品は、兵馬俑を何体かバンバンバーン!と置いているだけではない。
第1会場と第2会場では、展示品の趣きがかなり異なり、
特に第1会場では、当時の中国大陸の文明が如何様だったか、
秦王朝の国力や文化水準が如何なるものだったのかが窺える品が数多く陳列されている。

以下、気になった展示品をいくつか挙げておく。

★ 第1会場

動物形容器
ガマと犬をあしらったデザインの陶製の容器。

盉(か)
鳥の頭部をデザインした青銅製の容器。
中国には、動物をかたどった礼器“犠尊(ぎそん)”があるが、
この盉にしても、前出の動物形容器にしても、犠尊に通じるものを感じる。
ただ用が済めば良いだけの容器ではない、こだわりのデザイン。

金銀象嵌提梁壺
鎖の吊り手をあしらった蓋付きの壺。すでに取れてしまっているが、宝石を象嵌した痕跡が見られ、
かなり豪奢な壺であったことが窺える。

各種帶鉤
“帶鉤”は、今で言うベルトのバックル。
金属で作られたシンプルな物も有るが、豪華な物になると、金でメッキさ、白蝶貝や玉で装飾が施されている。
秦代のメンズは、すでにお洒落にまで気を遣っていたようだ。
また、マネキンを使い、帶鉤の使い方が分る展示もされている。



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玉剣・金剣鞘
玉を磨いて作った長さ30センチ弱の剣と、それを納める金製の鞘。
韓城市梁帶村の墓から出土された、春秋時代早期、紀元前7~8世紀頃の物と思われる品。
玉製の剣が実用的な武器とは考えにくく、恐らく墓の主が生前、特別なシーンで携帯した儀礼用の品。
高価な素材からも、墓の主の地位の高さが窺える。

両詔権/両詔量
始皇帝が天下統一のために行った事のひとつが、“重さ”の基準作り。
“両詔権”は重さ7.615kgの青銅製の文鎮のような物。
“両詔量”の方は、当時の5升、現代の1リットル弱を計れるスコップのような形の物。
これを使って穀物の配分などが行われていたらしい。

半両銭/半両銭母范
天下統一には、全土で通用する共通のお金も大切。
“半両銭”は、秦代に広く流通するようになった銅銭で、
重量が当時の度量で半両だったことから、このように呼ばれる。
“半両銭母范”の“母范”とは“型”のこと。つまり、半両銭母范は、半両銭を作るための型。

各種封泥
“封泥”とは、丸めた竹簡などを紐で束ね、その結び目に粘土のような物を付け、さらに押印した物。
ヨーロッパのシーリングワックス(封蝋)とまったく同じ概念の物が、中国では紀元前に使われていたのだ。
今回の展示では、封泥の使い方も分かり易く再現されている。
あと、関連展示がある、同じ敷地内の東洋館アジアギャラリーでは、皇帝の封泥も見られる。(以下を参照)

魚形陶鈴/魚形陶鈴范
魚形陶鈴は、中を空洞にし、小石のような物を入れた魚型の陶器。
つまり、子供が遊ぶ“ガラガラ”のような物。
“范”は型。よって“魚形陶鈴范”は魚形陶鈴を作るための型。
子供用の玩具を量産していたとは、なんて豊かな時代!

★ 第2展示室

8千体は有ると言われている兵馬俑は、それぞれ顔も身形も異なり、
兵士たちの出身地や役職の違いが見て取れるというのは、よく知られている事。
今回も、その差が判るよう、様々な兵俑が来ているのだが、ここには代表的なものを3体。



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御者俑 (画像左)
兵士を乗せて走る4頭立て馬車の御者。
両手で4本もの手綱を操らなければならないお仕事ゆえ、
身動きがとり易いよう、袖をゴテゴテ覆った鎧は着ていない。

将軍俑 (画像中)
兵士の中でも地位の高い武将は、かぶっている冠も鎧も立派。
このような将軍俑は、8千体の内10体しか出土されていないらしい。

雑技俑 (画像右)
戦場で闘う兵士のみならず、このような恰幅のよい半裸の男性も出土されている。
相撲をとる力士や、雜技を披露する芸人ではないかと推測されているらしい。




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石製鎧/石製冑
もうひとつビックリしたのがこちら。石で作った甲冑。
タイル状の小さな石を、紐と銅線で縫い合わせている。
重量20キロ超えだと…!普通の人は、こんな重い物を着たら、身動きとれなくて闘えない。
いや、それだけではなく、あの時代に細い銅線があって、
さらにそれを使い、器用にタイルを繋ぎ合わせる技術があったという事実だけでも驚愕。

★ 撮影コーナー

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一通り展示を見終ると、出口の近くに、自由に撮影して良い一角がある。
そこに置かれているのは、本物ではなく、レプリカなのだけれど、
パチパチ兵馬俑を激写するだけでワクワクするこの昂揚感は一体ナンなのでしょう(笑)?!

レプリカでもお触りは禁止。
近寄って、兵士たちをバックに自撮りする人も居るけれど、正面に長居する人は少ないので、
他人が入らない俑だけの写真は案外撮り易い。

★ 関連展示~東洋館アジアギャラリー

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同じ敷地内の東洋館アジアギャラリーでは、
この<兵馬俑>展に合わせ、多少ではあるが、関連の品を展示中。
(<兵馬俑>展のチケットで、こちらも追加料金ナシで見学可能。)


私が特に見ておきたかったのは、(↓)こちら。

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前述のように、秦代ではすでに、ヨーロッパのシーリングワックスにも似た
“封泥”なる物が使われていたわけだが、
“皇帝信璽”と題されたこちらは、その名の通り、現存する唯一の皇帝の封泥で、
「皇帝の真の印」という意味の文字が捺されている。
篆書の字形や、“田”の字の区画内に文字を配する封泥の形状から、これが秦代の物である可能性アリ。
確証はされていないようだが、もし本当に秦代の物ならば、
始皇帝の玉璽が使用された可能性も充分考えられるのだと。
(なお、この画像だと大きいが、実物は切手サイズほど。)



<兵馬俑>展とは関係無いけれど、東洋館の中を見学していたら、
またまた初めて見る清代の素敵なお宝と出逢った。

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こちら、“象牙彫卣(ぞうげぼりゆう)”。
文人の書斎などを飾る調度品だったらしい。象牙を緻密に細工しており、豪華でありながらシック。
非常に素晴らしい。展示は、2015年12月23日(日曜)までとのこと。
清代の品に興味がある人は必見です。

★ ミュージアムショップ

最後に、もう一度平成館に戻り、ミュージアムショップを。
おうちに置ける兵馬俑は、小さな物から大きな物までサイズ色々。
他にも、定番のポストカードや、マグネット、マスキングテープ、始皇帝&兵馬俑柄の手拭い等々、
本展覧会オリジナルのグッズが多数あり。

私が購入したのは、(↓)こちら。

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兵馬俑チョコ♪テラコッタ・ウォリアーズならぬ、チョコレート・ウォリアーズでございます。
ひと箱に、身長10センチ程のチョコレート製プチ将軍俑が5体入り。
自分用にひと箱、親用にひと箱の計2箱購入。
これも、この特別展限定の商品なので、賞味期限も長いし、もうひと箱くらい余分に買っておいても良かった。


自宅に持ち帰ってから、兵馬俑を発見した農民になったつもりで、発掘、…じゃなくて開封。

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おぉ~、坑の中で永い眠りから醒めた将軍俑!
本当は、全員を箱の外に立たせて、“兵馬俑ごっこ”をしたかったのだが、
背中が平べったくて直立不可能であった。残念…!

★ オマケ~兵馬俑オマージュ

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兵馬俑好きな私は、大陸のアーティスト・岳敏君(ユエ・ミンジュン)の作品、
<現代兵馬俑~Contemporary Terracotta Warriors>シリーズの彫刻も好き。


他にも、兵馬俑と言えば、張藝謀(チャン・イーモウ)&鞏俐(コン・リー)主演の
『テラコッタ・ウォリア 秦俑』(1989年)なるトンデモB級映画もアリ。

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秦始皇帝陵建設の現場監督・蒙天放(張藝謀)が、美女・冬兒(鞏俐)と恋に落ちたことがバレ、
始皇帝の怒りに触れ、兵俑にされ(!)、他の兵馬俑と一緒に陵墓に生き埋めにされるが(!!)、
実は事前に不老不死の薬を飲んでいたため、1930年代で突然甦生したら、
あの可憐な冬兒がケバい三流女優になっていた、…みたいな話じゃありませんでしたっけ?
斬新すぎるストーリー!私、その昔、この映画を観たせいで、
兵馬俑を見ると、一体一体の中にホンモノの人間が入っているのではないかと疑ってしまうようになった。
もう一度観て爆笑したいから、<始皇帝と大兵馬俑展>開催記念に、
どこかのテレビ局が放送してくれることを熱烈希望。





今回のこの特別展は、メインの兵馬俑以外の展示品が、想像していたより良かった。
秦代くらい昔だと、本来は興味が持てないのだが、説明を読みながら見学していると、
秦がいかに文明の進んだ国で、世界の最先端であったかを思い知らせれる。
当時、日本は弥生時代。我々の先祖が“はじめ人間ギャートルズ”みたいな原始的な生活をしていた頃に、
お隣の国では、宝石を象嵌した鼎が作られていたり、セレブな男性が小ジャレたベルトを腰に巻いていたり、
子供にお魚型のキュートなガラガラを与えて遊ばせていたのか、…と考えたら、タメ息が洩れた。
兵馬俑の方は、これを見たことで、益々西安で大量の俑に圧倒されてみたくなった。

混雑状況は、一回目の見学の際、到着した時点では、“ほどよい混み具合”という感じだったので、
平日の朝狙いで正解だったと自己満足したのだけれど、
その後、修学旅行の高校生がゾロゾロと入ってきて、少々騒々しくなってしまった。
混雑の当たりハズレは運次第かも知れない。




◆◇◆ 始皇帝と大兵馬俑展 The Great Terracotta Army of China's First Emperor ◆◇◆
東京国立博物館 平成館

会期:2015年10月27日(火曜)~2016年2月21日(日曜)

9:30~17:00 (基本的に月曜、年末年始は休館)


なお、本展は、2016年3月15日(火曜)から6月12日(日曜)まで九州国立博物館、
2016年7月5日(火曜)から10月2日(日曜)まで大阪の国立国際美術館で巡回予定。

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