あ゛ーーっ、2016年1月も1/3が過ぎてしまった…!
お早い方は、2015年12月中旬から“2015年度ベスト映画”を挙げておられたようだが、
私は毎度のように、のそのそと今更になって昨年度の我が鑑賞記録を振り返り、
独断と偏見だけで、勝手に表彰せていただきます。

最優秀作品賞に当たる黄金芒果奬(ゴールデン・マンゴ賞)、
テレビドラマを対象にした芒果電視劇奬(マンゴTVドラマ賞)、
逆に、映画、テレビドラマそれぞれの苦手作品には
当ブログ版“ラジー賞”、臭榴槤獎(くっさ~いドリアン賞)、
また、色んな意味で注目に値した俳優には芒果演員獎(マンゴ俳優賞)を新たに設定。
【ノミネートの条件】映画賞の対象は、2015年度、私mangoが 映画館、映画祭など、劇場のスクリーンで観た初見の作品のみとする。よって2015年度劇場公開された作品でも、私にとって初見でなければ、対象外の扱い。また、テレビやDVD等で鑑賞した作品も、対象外とする。芒果電視劇奬に関しては、2015年度内に観終えたドラマのみ対象で、鑑賞途中のものは含まない。
★ 臭榴槤獎~くっさ~いドリアン賞
本当は、昨今日本に入ってくる台湾ドラマの9割に臭榴槤獎を捧げたい気分。
それ程、ことごとくハマれる物ナシ。でも、一本なら、この『ショコラ~流氓蛋糕店』を選択。
コレ、日本の長澤まさみ海外初主演ドラマ。
長澤まさみ自身は、慣れない環境に入り、中国語の台詞も一生懸命覚えて頑張ったと思うけれど、
出来上がった作品がこんなに低クオリティでは、彼女の努力も報われず、気の毒になる。
その後、吳宇森(ジョン・ウー)監督作品『太平綸~The Crossing』の出演に繋がったのが救い。
映画は、これっぽっちも迷うことなく『KANO-カノ-1931海の向こうの甲子園』。
2015年も明けてまだ間もない1月末に観て、あららぁー…。
その時点ですでに、2015年の残り11ヶ月でこれを越える駄作には出会えないと予感した。
優れた俳優が優れた監督になるとは限らない。
馬志翔(マー・ジーシアン)はなぜ監督業に手を出し、キャリアを汚すような映画を撮ってしまったのだろうか。
ダラダラとまとまりの無い脚本、過度な演出、耳障りな音楽や効果音…、と全てが稚拙。永瀬正敏の無駄遣い。
お金のない学生だって、優秀な子は、もっとマシな自主製作映画を撮る。
このような陳腐な作品が、台湾映画としては珍しく日本でそこそこのヒットとなったのは、
「日本は素晴らしい!」、「植民地にしてくれてありがとう!」と“褒めてもらいたい病”に陥っている
昨今の日本人の弱った心をくすぐったからとしか思えない。
★ 芒果電視劇奬~マンゴTVドラマ賞
テレビドラマは、日台中から一本ずつ、計3本を選出。
2015年日本で話題になったドラマと言えば、TBS『下町ロケット』のヒットが記憶に新しい。
ドラマ後半を、朝日新聞に掲載の池井戸潤書き下ろし新作小説<下町ロケット2>と同時進行させるなど、
新たな試みがあったので、少し期待していたのだけれど、
4年前に放送されたwowow版が好きな私は、TBS版にはまったく感情移入できなかった。
2015年も日本のドラマで抜きん出ていたのは、やはりwowow。
『夢を与える』、『ふたがしら』、『煙霧~Gold Rush』、『スケープゴート』、『死の臓器』、『誤断』等々どれも秀作。
中でも『5人のジュンコ』は、“5人のジュンコ”に扮する松雪泰子、ミムラ、西田尚美、麻生祐未、小池栄子
のみならず、渡辺真起子、茅島成美、杉田かおるといった脇に至るまで、女優たちの名演技に息を呑む。
スッピンでボケ気味の老母を演じる茅島成美に、意外な女優魂を感じたし、
寝たきり老人に胸をムンズと掴ませ、お金をせしめようとする杉田かおるのスレっぷりも忘れ難く、
「この人、だてに子役から芸能人やってないわ…」と感心。
日本の女優の実力を確認させてくれるドラマであった。
台湾ドラマは、日本に入ってくる物に限って言えば、もう壊滅的…。
私が芒果電視劇奬に選んだのも、日本未上陸のドラマで『春梅~HARU』。
春梅という台湾人女性の人生を軸に、日本統治時代の台湾を描いたフィクション。
多くの日本人が興味をもつテーマだと思うが、映画『KANO』とは違い、
日本の軍国主義や、植民地支配の負の部分も描いているため、この先も日本に入って来ることは無いと推測。
台湾人俳優が危うい日本語で日本人を演じるなど、ツッコミ所も多々有れど、
視聴者を物語の世界へグイグイ引き込む、よく出来た脚本。
不調が続く台湾ドラマと反比例するかのように、大陸ドラマの勢いは増すばかり。
美術、衣装、映像のレベルの高さでは『紅楼夢~紅樓夢』、
そこにさらに人々を引き込む巧妙なストーリーテリング力が加わった物なら『琅琊榜~Nirvana In Fire』
を挙げたいところだけれど、前者は数話見逃しており、後者もザッと通しでしか観ていないため、
2015年度芒果電視劇奬の対象からは外した。
そこで、2015年度のBest Of 大陸ドラマは(正確には、中香合作)、
一応『賢后 衛子夫~衛子夫/大漢賢后衛子夫』にしておく。
はっきり言って、『琅琊榜』などと比べてしまうと、かなり質は落ちるが、
それまであまり馴染みの無かった衛子夫(紀元前2世紀-紀元前91年)の生涯を
分かり易いエンターテインメント作品として紹介してくれた点と、
主演女優・王珞丹(ワン・ルオタン)の魅力が決め手となって受賞。
同じように、“歴史に埋もれていた女性を紹介するエンターテインメント”としては、
『後宮の涙~陸貞傳奇』も巧いと思った(…超軽いケド)。
また、2015年日本で一気に3作品放送された“武則天モノ”の中では、
『武則天 秘史~武則天秘史』が最も史実をなぞっていて、興味深く観ることができた。
★ 芒果演員獎~マンゴ俳優賞
一人目は、私個人的には特別ファンというわけではないのだけれど、
2015年一気に飛躍した印象のあるDEAN FUJIOKA(ディーン・フジオカ/藤岡靛)。
彼が台湾から日本へ拠点を戻し、NHK朝ドラ『あさが来た』で五代友厚を演じたことで、
普通のオバちゃんたちから「五代サマ~!」、「おディーン!」と呼ばれるほどブレイクするとは想定外。
以前から台湾偶像劇で彼に馴染みのあった日本人にとっては、
留学先で苦労していた息子が、故郷で大出世したような、意外性と安堵が入り混じった感覚に違いない。
私が彼に期待したいのは、むしろ“今後”。最近ディーン・フジオカのファンになった日本人は、
彼が“台湾では誰もが知る人気スタア”だったと信じている人も多いかも知れないけれど、
実際にはそこまで知名度は高くなく、彼が中華圏で活躍するのは、
むしろ“再輸出”現象が起きるかも知れない、これからと予想。
日本で大ブレイクしたことで→まず台湾あたりで注目が高まり、
→「藤岡靛って以前台湾に住んでいて、中国語も喋れるんだってよ」と噂が広まり、
→“中国語を喋る日本のスタア”として、中華圏の有名監督から出演オファー、なんて将来は充分有り得る。
2015年の活躍で、中華圏進出の成功率が最も高い日本人俳優の一人に急浮上したという印象。
近年、アジアで、日本人俳優は存在感が薄いので、ディーン・フジオカに期待いたします。
もう一人は、大陸の胡歌(フー・ゴー)。
若い内からアイドル俳優として華々しく活躍をしていたものの、2006年大事故に遭い、やや低迷。
昨年主演ドラマ『琅琊榜~Nirvana In Fire』が大当たりし、
広く中華圏で「2015年は“胡歌イヤー”」と言われるほどの大復活を果たした。
私にとっての胡歌は、それまで、“客観的に見て二枚目だけれど、特別好みのタイプではない”という位置。
ところが、『琅琊榜』で主人公・梅長蘇を演じる彼を見て、いとも簡単に胡歌オチ…!
“中華圏で『琅琊榜』&胡歌大ブレイク”の理由を、自らの経験で、深く理解したのであった。
その『琅琊榜』が、今年日本にも上陸。
台湾偶像劇の衰退で、そろそろ大陸明星時代に突入する予感もするし、
このタイミングで胡歌は日本でも結構イイ線まで行くかも知れない。
また、私が胡歌を好むのは、“映画に向いている”と感じるからでもある。
とにかく、まだまだこの先の活躍が期待できる胡歌なのです。
★ 黄金芒果奬~ゴールデン・マンゴ賞
黄金芒果奬2015は、迷いに迷って、婁(ロウ・イエ)監督の『二重生活』に決定。
実際には、上位5位くらいまでは、甲乙付け難く、別にどれが一位でも良かったのだけれど、
2015年のフィルメックスで観られるかなぁ~と期待していた新作『推拿~Blind Massage』が、
結局入ってこなかったので、2016年こそ日本で観られますように!という願いも込めて、
婁監督作品『二重生活』を首位に選んだ。
もちろん、妥協で選んだのではなく、『二重生活』は優れた作品。
正妻と愛人というふたつの家庭を持つ男の話をスリリングに描いており、
所々日本とは事情が異なる中国ならではのお国柄が感じられるのも興味深い。
以下、印象に残った作品を絞りに絞ってもう10本。
『薄氷の殺人』:主演男優・廖凡(リャオ・ファン)と映像にシビレる作品。
『黒衣の刺客』:武俠映画を撮っても揺るがない侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督テイスト!
『山河ノスタルジア』:賈樟柯(ジャ・ジャンクー)が初めて未来を撮った作品。
『酔生夢死』:最近の台湾映画では珍しくなった作家性の強い作風にガツーンとやられる。
『私の少女』:シリアスな内容を一歩退いた目線で淡々と描く韓国映画。
『追憶と、踊りながら』:イギリスのカンボジア系華人監督による“溝を埋めようとする”人々のドラマ。
『あん』:河直美監督最新作は、ハンセン病の元患者を主人公にした人間ドラマ。
『いつか、また』:作家・韓寒(ハン・ハン)の初監督映画。軽妙なノリが、意外と私の好みに合った。
『野火』:塚本晋也監督が自主制作で撮った、今の時代だからこそ観ておきたい渾身の戦争映画。
『愛のカケヒキ』:香港の彭浩翔(パン・ホーチョン)監督が上海と台湾を舞台に撮ったラヴコメ。
毎度の事だけれど、中華圏の作品は観る本数が多い分、名作と感じる物も多い。
逆に、酷評したくなる作品も多く、香港系のアクション映画とか大陸の超大作は、「もう勘弁…」って感じ。
私から見たら“瀕死状態”の台湾映画界からは、
侯孝賢(ホウ・シャオシェン)、張作驥(チャン・ツォーチ)の両監督が
「テレビの2時間ドラマみたいなお気楽映画だけが台湾映画じゃない!」と言わんばかりに、
台湾トレンドに逆行した個性的な作品を発表してくれたのが嬉しい。
韓国映画は、一時期の勢いが感じられず、似たような娯楽作ばかりの日本上陸が目立つ。
もし東京国際映画祭でホン・サンス監督最新作『今は正しくあの時は間違い~지금은맞고그때는틀리다』を
観ていたら、このランキングにも入っていたかも。一般公開に期待。
印象の残っている作品があるけれど、ベスト10には特に社会的意義が感じられる作品2本を入れた。
『野火』の方は、はっきり言って好みの作風とは言い難いが、
戦中の日本を美化しないと叩かれるような不気味な風潮の中、
敢えてこのような作品を撮った塚本晋也監督の勇気と信念に、心打たれた。
今年2016年は、まず
ドラマだと…

とにもかくにも、『琅琊榜~Nirvana In Fire』の放送開始が待ち遠しい。
あと、『宮廷の諍い女~後宮甄嬛傳』の主演×監督コンビによる『羋月傳~Legend of MiYue』も
日本に上陸するのだとか…?こちらも大変な話題作なので、期待が高まる。
もう一本、意外な注目作が『太子妃升職記~Go Princess Go』。
ネット配信の低予算ドラマながら、高額製作費の超豪華ドラマ『羋月傳』以上の評価を得ているダークホース。
内容は、現代のチャラ男が古代にタイムワープし、男性の心のまま皇太子妃となり、
後宮の女たちにヨロメいたり、男性ともしっかりラヴラヴになってしまったりと、
なんかもー時代も性も超越してしまったお話のようだ。
主演女優・張天愛(チャン・ティエンアイ)は、この一本で時の人。今後メジャーな活躍が予想される。
手掛けたのは、俳優としても活動する30代半ばの監督・侶皓吉吉(リュハオジージー)で、
多くの著書が映像化されているあの人気作家・海岩(ハイイェン)の息子。
現地で『太子妃升職記』を支持しているのは若者中心みたいなので、私には軽過ぎるようにも想像するが、
B級ドラマ感覚で観たら、結構楽しめるかも…?
ただ、そもそもがウェブドラマなので、日本のテレビで放送されることは無いと考えた方が普通でしょうか。
台湾ドラマだと、『ニエズ~孽子』の原作者×監督コンビによる『一把青~A Touch of Green』は、
是非ぜひ観たいが、日本に入って来る台湾ドラマの傾向が変わらない限り、期待薄…。
日本でもいい加減“偶像劇以外の台湾ドラマ”が観られるようになって欲しい。

2015年、日本では映画祭のみで上映された2本の作品、
台湾の易智言(イー・ツーイェン)監督久々の新作『コードネームは孫中山~行動代號:孫中山』と、
香港の彭浩翔(パン・ホーチョン)監督作品『アバディーン~香港仔』、
これらの一般劇場公開を熱烈に希望…!!
あとねぇ、すっかり欠乏している“金城武成分”を、そろそろ私に補充させていただきたい。
出演作の配給、ヨロシクお願いいたします。